サステイナビリティ会計を標準化する - SASB (Sustainability Accounting Standards Board)

アメリカの会計報告義務は、SEC(連邦証券取引委員会)の管轄で、年次報告(Form 10-K)がよく知られた報告義務です。報告義務の標準化にあたっては、民間団体FASB(Financial Accounting Standards Board)が1973年に設立されており、米国の企業会計の基準をつくるうえでの取りまとめを行う機関として、SECに正式に認可されています。

一方、サステイナビリティ関連の情報を会計報告に盛り込もうという動きはアメリカでも高まっていましたが、今年SASBという民間団体が正式に発足。サステイナビリティ会計版のFASBになるべく、活動を開始しています。SASBは、重要な(マテリアルな)サステイナビリティに関する事項を、業界ごとに標準化していくことをミッションとしています。これにより、サステイナビリティ関連の企業の成果を、上場企業や投資家が会計報告書に照らして測ることができるようになるというわけです。

Greenbizが、SASBのエクゼクティブ・ディレクターであるJean Rogersのインタビューを掲載しています。記事の一部分の抄訳を掲載します。参照される場合は、下記のリンクから原典をご覧ください。

Greenbiz: 企業にとって、SASBに参加するメリットとは?
JR:…多くの企業が、多岐にわたるESG(環境、社会、ガバナンス)関係の情報開示を、投資家やNGOから求められ、時間を割かれています。そのせいで本来やらなければならないビジネス業務に集中できないと感じている企業も多いのです。なので、我々はそれを効率化しようとしているわけです。SASBが、ステークホルダーにとっても、投資家にとっても、企業にとっても特に重要である(マテリアルな)課題を確定することで、ビジネスリスクやビジネスチャンスをマネージすることができます。企業を疲弊させている情報開示のための質問は、オーバーラップしていることも多いのです。

Greenbiz:GRI(Global Reporting Initiative)とはどう違うのですか?
JR:SASBは、GRIと競合しているのではありません。SASBは年次報告書(Form 10-K)にフォーカスしています。例えて言うなら、SASBが最低基準(フロア)で、GRIが最高基準(シーリング)と考えています。SASBが標準化するのは、SECも認識しているような、最低限の数の非常にマテリアルな問題です。それ以上のレベルのサステイナビリティ報告をしたい場合は、GRIにのっとればいいわけです。・・・・現在GRIに準拠した会計報告をしているのは約200社。アメリカには35,000の上場企業があるわけですから、我々の潜在的ユーザーは34,800にのぼります。

Greenbiz: SASBは規制ではありませんよね。規制ではないとすれば、10-KにSASBの基準を盛り込むことを義務化するにはどうすればいいのでしょう?
JR: ・・・まずはきちんとしたコンセンサスにのっとって何が「マテリアルな」問題なのかの基準を作ります。その基準リストができたら、企業に対して試験的に導入することができます。10-Kの範囲内でのテストなのか、範囲外になるのかはこれから決まっていくでしょう。また。SECとも協力して、何らかの猶予期間的なものを決める必要があるでしょう。現在のところのSASBの提案は、10-KのMD&A(Management Discussion & Analysis)のセクションにサステイナビリティ情報を入れるというものです。MD&Aにはどういう情報を入れてもいいということになっていますから、世の中の潮流に対してどういう対応をしているかという情報を入れるのに、うってつけの場所だと考えます。

Greenbiz: SASBは費用対効果がいい、ということですが?
JR: 新しい情報を開示するためには、コストがかかります。しかし、すでにフォローしている情報を開示するだけなら、コストは最小限ですみます。例えば、Carbon Disclosure Project (CDP)には、すでに3,000のアメリカ企業が参加しています。これらの産業にとって、CO2排出はマテリアルだといことになりますし、すでにレポートを行っているわけです。CDPの情報を10-Kに添付するだけであれば、コストは最小限ですみます。

Greenbiz: 5年後、SASBはどのようになっているでしょうか?
JR: 完全な基準が完成して、リーダー企業がパイロットで導入しているでしょう。SECとの協業も実践に向けて詰めていかなければなりません。SEC内部で解決しなければいけない問題もありますし、そういったプロセスがこれから3~5年の間にできていけばいいと思っています。

Joel Makower in conversation with Jean Rogers of SASB

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